誰しも、周りから良く思われたい、評価されたいと思うことがあります。しかし、それが過剰になればなるほど苦しくなってしまうものです。今回は仏教の基本『四聖諦(ししょうたい)』を通じて、「人の目が気になる」「承認欲求から解放されたい」と感じる方に、禅の修行を交えた話しです。
①『苦諦』―人の目が気になるのは「苦」である
四聖諦の一つ目、『苦諦(くたい)』とは「人生には苦しみがある」という真実です。具体例を挙げましょう。
具体例:
SNSに投稿した写真の「いいね」が少ないと不安になったり、他人から批判されることを恐れて自分の本音が言えなかったりすること。
これは典型的な「苦」の状態です。SNSが実態化し、現実そのものになっている現代では、SNS上の誹謗中傷によって心を病み、最悪の場合は自殺にまで追い込まれる人もいます。それほどまでに深刻な「苦」の一つとなっています。
②『集諦』―承認欲求が苦を作り出す原因
次に『集諦(じったい)』とは、「苦しみには必ず原因がある」という教えです。その原因とは、ここでは『承認欲求』です。
具体例:
上司や同僚に褒められたいがために無理をして仕事を引き受け続け、疲れてしまう。評価が得られないと自分の価値を否定されたように感じてしまう。
この承認欲求が強すぎると、私たちは苦しみの連鎖から逃れられません。
③『滅諦』―承認欲求を手放せば苦しみは消える
三番目の『滅諦(めったい)』は、「苦しみは取り除ける」という真実を伝えます。つまり、承認欲求へのこだわりを手放せば、人の目を気にして苦しむことがなくなります。
具体例:
「いいね」の数に左右されず、自分が好きなことを自由に発信できるようになり、批判されても「それも一つの意見だ」と穏やかに受け止められる。
これが『滅』、苦しみが消えた状態です。
④『道諦』―禅の修行(呼吸への集中)で苦しみを消す方法
最後の『道諦(どうたい)』は、「苦を取り除くための具体的な方法」を示します。その方法の一つが、禅や瞑想における『呼吸への集中』です。
具体例:禅の修行の実践方法
• 静かな場所で座り、呼吸に意識を集中します。
• 呼吸を数えて(数息観)、吸って吐いてを繰り返します。
• 途中で承認欲求や他人の目が気になったら、「今、承認欲求が湧いた」と客観的に気づき、再び呼吸に戻ります。
この練習を繰り返すと、自分の中に湧く欲求や感情に振り回されない力が自然に養われます。
四聖諦と禅で自由になる
人の目が気になる苦しみを、四聖諦という仏教の智慧で整理し、禅の修行で具体的に対処することができます。
•苦諦(苦しみ): 人の目を気にして苦しいと気づく。
• 集諦(原因): 承認欲求が苦しみを生んでいると理解する。
• 滅諦(消滅): 承認欲求を手放せば苦しみは消えると知る。
• 道諦(実践): 禅の呼吸への集中を通じて、欲求や感情に巻き込まれない訓練を積む。
まずは日々の生活の中で数分でも良いので、静かに呼吸を意識する時間を作ってみてはいかがでしょうか。心の自由を取り戻す小さな一歩になります。