RAGって何だろう?

みなさんは「慢性腎臓病(CKD)」という言葉を聞いたことがありますでしょうか。腎臓が長い期間かけて少しずつ悪くなってしまう病気で、進行すると透析や腎移植が必要になることもあります。
こうした慢性腎臓病の知識をもっと深めたいときに、私たちは普通、専門書や学術論文を読む必要がありますよね。でも、分厚い論文をいきなり全部読むのは大変です。専門用語も多く、調べながら時間をかけて理解するのは一苦労。

そこで注目されているのが、RAG(Retrieval Augmented Generation)という技術です。ChatGPTのようなAIに、学術論文や専門データベースを検索・参照させることで、まるで一緒に論文を読みながら要点を整理してくれるように、わかりやすい回答やまとめを作り出せる仕組みです。

「図書館+ChatGPT」のようなイメージ

RAGを簡単に例えるなら、「図書館の司書さんとChatGPTが合体したようなシステム」といったイメージです。
1. 普通のChatGPT
もともとChatGPTは、人間のように会話しながら文章を作ることができますが、必ずしも最新の情報や細かい専門知識を全部もっているわけではありません。
2. RAGでパワーアップしたChatGPT
• 学術論文などの外部データ(今回は、慢性腎臓病に関する研究論文)にアクセスできるようにする
• ユーザーがChatGPTに質問すると、ChatGPTは自動的に膨大な論文の中から関連する部分をピックアップし、それをもとに回答を組み立ててくれる

たとえるなら、ChatGPTが自分の頭の中だけでなく、図書館の棚にある本の内容にもアクセスできるようになるのです。

具体的にはどういう流れ?

  1. データを準備する

まずは慢性腎臓病に関する論文データを用意します。たとえば「CKDの進行を遅らせる食事療法」や「CKDにおける高血圧と心血管リスク」など、数多くの学術論文を、自分のパソコンやクラウド上にまとめておきます。

  1. リトリーバル(検索エンジン)で探す

次に、RAGの「R(Retrieval)」部分が、いわば“司書さん”の役割をはたします。
• ChatGPTが「こんな内容の論文が必要だ」と思えば、リトリーバルエンジンが保管している論文の要約や目次などを見て、「これだ!」という文章を探し出してきます。

  1. 回答を生成する

最後に、RAGの「AG(Augmented Generation)」部分。
• ChatGPTは、引っ張ってきた論文データと自分がもともと学んでいる知識を組み合わせながら、ユーザーへの回答を作ります。
• たとえば「CKD患者に推奨されるタンパク質摂取量はどれくらいか?」という質問に対して、複数の論文を参照し、一般的な目安や注意点などをわかりやすく提示することができます。

例:「CKD患者に適した食事療法は?」

みなさんが、ChatGPTにこんな質問をするとしましょう。

CKDの患者さんに、腎臓の負担を減らす食事療法のポイントを教えてください。

1.  ChatGPTは「CKD」「食事療法」といったキーワードを確認します。
2.  RAGが動き、あらかじめ保存しておいたCKD関連の論文データベースから、該当する研究や専門的なガイドラインを探し出します。
3.  その中には「タンパク質は体重1kgあたり○g程度が推奨される」「塩分の摂取量は1日○g未満に抑えたほうが良い」などの情報が書かれています。
4.  ChatGPTは、それらの情報を自分の中でまとめて、ユーザーに「タンパク質は1日◯g程度に抑えると良い」「塩分は◯g未満が勧められる」などの回答をわかりやすく提示してくれます。

こうして、最新の学術論文の内容を参考にした回答が、すばやく得られるわけです。

どうして便利なの?
• 最新の研究成果を取り込める
ChatGPT単体だと、学習時点(例えば2021年頃)までの知識に限られがち。しかしRAGを使うと、より新しい論文やガイドラインを読み込んで答えを導けます。
• 専門的な文章を自動で要約してくれる
論文は専門用語が多く、読むのが大変です。でもAIが先にざっくりまとめてくれると、最初の敷居がグッと下がります。
• 論文全体を網羅的に参照できる
どの論文のどの部分に何が書かれているか、AIが自動で探してくれるため、大量の文献を一度にカバーしやすくなります。

注意点

ただし、この仕組みがいくら便利だからといって、最終的に治療方針を決めるのは医師である点は変わりません。AIはあくまでサポートですので、気になる症状や治療法があれば必ず専門の医療機関に相談しましょう。

また、どんなに優れた検索技術でも、元の論文データが誤っていたり偏っていたりすると、AIの回答にもその影響が出てしまいます。AIの答えをうのみにするのではなく、複数の情報源を比べながら、内容を確認する姿勢は大切です。

まとめ ~RAGがもたらす未来~

RAG(Retrieval Augmented Generation)は、ChatGPTのようなAIが外部の専門データにアクセスし、より正確で詳しい情報を提供できるようにする仕組みです。
今回の例では「慢性腎臓病(CKD)の学術論文」を取り込むことで、医療や健康に関する専門的な知見をAIがサポートできる形になりました。専門用語だらけの論文の山を一瞬で検索して、必要な部分を抜き出してくれるのは、とてもありがたいですね。

ただ一方で、まだまだ完璧な存在ではありません。私たち自身が正しい知識かどうかをチェックする姿勢も必要です。とはいえ、今後RAGのような技術が発展すれば、医療や研究の世界で情報を共有しやすくなり、私たちの暮らしがさらに豊かになると期待されています。

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